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![【Kort Valuta柴田秀樹×篠崎侑美】社会課題の解決やマーケティング、採用活動にも効果的な「TwooCa」とは?給与支払いから変わっていく未来【後編】](https://careerbloominc.com/data/wp-content/uploads/2025/01/241108_0023.jpg)
![柴田 秀樹さん](https://careerbloominc.com/data/wp-content/uploads/2025/01/241108_0172.jpg)
![篠崎 侑美さん](https://careerbloominc.com/data/wp-content/uploads/2025/01/241108_0600.jpg)
2023年に世界初の決済デバイス「TwooCa Ring(ツウカ リング)」をローンチした柴田秀樹氏。前編では、シリコンバレーでの経験や、女性推進に対する思い、フィンテックとヘルステックを掛け合わせた理由について紐解いた。後編では、「TwooCa」が実現する分散型社会について深掘りしていく。
デジタルマネーでの給与支払いを実現するため、8年かけ法改正へ
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−「TwooCa」では会員特典サービスが受けられるそうですが、どのような仕組みなのでしょうか。
柴田:皆さん、給与は金融機関に振り込まれますよね。例えば1000万円を金融機関で貯金していても、時間外手数料で引き出したら金利を上回ってしまい、実質損をしてしまっています。でも僕らのサービスで賃金のデジタル払い(デジタルペイロール)を利用してもらえれば、金利の代わりに好きな企業やブランドの特典を受けることができるようになります。(現在、賃金デジタル払い指定資金移動業者申請準備中)例えばブランドを選択すると限定商品や20%オフでの購入ができたり、旅行会社を選択すると格安航空券が買えたりします。企業やブランドはご自身で毎月選択ができます。
篠崎:柴田さんがアメリカで上場された会社は、この仕組みで大ヒットしたのですよね。
柴田:電車に乗っていて、若い子たちが「給料をどのブランドで選んでる?」と会話しているのを聞いた時は感動しました。日本では給与をどの金融機関に入れているかで話が盛り上がることはないですよね。どの金融機関を選んでも、大きな違いはないからです。それを僕らは自分の趣味嗜好に合わせたブランドを選ぶことで、変えていこうとしています。
篠崎:いわゆるポイ活に近いですね。
柴田:アメリカではポイ活という文化はありません。ポイントを長期的に貯めるのは日本人の特性だと思います。だからこそ日本でこのサービスはハマると考えました。しかし銀行口座を介さずにデジタルマネーで給与を支払うには、まず法律の改正が必要でした。実現不可能だと言われましたが、約8年をかけ、2023年4月に労働基準法施行規則の改正によってペイロールが解禁されました。
篠崎:凄いです。給与がデジタルで支払われるだけでなく、Visaのタッチ機能を搭載しており、支払いも簡単です。
マーケティングや社会課題解決、採用活動にも寄与
−ブランド側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
柴田:複数ブランドの中から自社を選んだカスタマーの所属企業や年収、年齢、さらには健康状態まで分かります。マーケティング会社に依頼したら膨大な費用がかかるマーケティングデータを無料で、しかも精緻なデータを取得することができるんです。さらに僕らは決済手数料の一部をブランドに還元することを想定しています。例えばアウトドアブランドはビーチクリーンの活動を行いますが、ボランティアでは長続きせず、結局行政の助成金頼みになってしまいます。でも手数料の一部を活動の寄付に回せば、活動資金が生まれてくる。利益を分配することで、エコシステムが生まれるんです。保育所や幼稚園の増設など、行政に任せるしかなかった社会課題も、僕らの仕組みを利用すれば解決していける。それを目指しています。
篠崎:そのほかにも参画企業・ブランドのメリットはありますか。
柴田:採用にも効果的です。例えば「TwooCa」で学生証を発行している大学の中で、同じ航空会社を選択し続けている学生がいたとします。そこでその学生に航空会社からインターンシップの案内をしたところ、やはりその航空会社でCAになりたいと考え、勉強している子だったりする可能性があります。航空会社が本来そういった学生とマッチングしようとしたら、莫大な採用コストがかかります。しかし「TwooCa」によって無料でマッチングが可能になると考えています。
篠崎:学生にとっても大きなメリットですよね。数々の採用サイトに登録し、就職活動をする必要もありませんし、何より自分が好きな企業から直接アプローチが来て、とても嬉しいと思います。
柴田:「TwooCa」は決済カードであり、本人確認が必要なので、身分証明が済んでいるという点でも採用に向いています。ある程度スクリーニングがかかった状態でマッチングが出来るわけです。
篠崎:採用に携わったことのある身からすると、いかにこれが大きなコスト削減に繋がるか実感します。人員確保が難しい時代において、ロイヤリティの高い人材を確保できるなんて夢のようです。
有名サードウェーブコーヒーとの出会い、新規顧客へのリーチ拡大を実感
−様々な市場において大きな変化が起こりそうですね。
柴田:来年、再来年あたりには話題になっていたいですね。実はサンフランシスコにある有名サードウェーブコーヒーも、アメリカで僕らのペイロールを導入してもらい、普及したブランドの1つです。当時はサンフランシスコの郊外に小屋のような小さな店が1店舗あるだけでした。サンフランシスコにはTwitter社やセールスフォース社があり、お昼にはコーヒーを求めてどのコーヒーショップも大混雑しますが、その店舗は裏路地にあり、全然知られていませんでした。たまたま僕らのオフィスの近くにあったので、よく打ち合わせに利用していたんです。イタリア移民の店主が入れるコーヒーは美味しかったので、「無料だからペイロールを入れてみてくれ」と言って、入れてもらいました。そのブランドを選択すると、コーヒーが月4杯無料になる特典をつけました。
篠崎:オフィスの近くで空いている上に、無料のコーヒーがある。興味を持つ人は必ずいますよね。
柴田:アメリカ人にとってお昼のコーヒーは欠かせませんからね。すぐに近所で働いている人たちが来るようになりました。そこから徐々に口コミが広がり、メディア取材も増えて、“サンフランシスコで一番売れているサードウェーブコーヒー”と言われるようになりました。彼らが海外進出の1店舗目として日本を選んだのは、僕らへの感謝の意味があったんです。当時僕はアメリカに住んでいたので、日本に出店すると言われてもピンと来ていなかったのですが(笑)。
篠崎:お話が規格外すぎます(笑)。でもペイロールはブランドが新規顧客にリーチするきっかけにもなるということですね。
柴田:更に手数料の一部が支払われるので、ただお店を経営するより多くの利益を手に入れることができます。一部の人だけが知っている本当に良いお店を、救うことが出来るかもしれません。これを地域に応用すれば、自分の地元の町のカードを選択すれば、町にお金が落ち、自分は地元のお酒なんかがもらえるようにもなります。僕らはこれを分散型社会と呼んでおり、分散型社会の実装をゴールに掲げています。
人間の本質「好き」を起点にしたサービス設計
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−選択する企業・ブランドは毎月変えることが出来るのですよね。
柴田:人の「好き」は変化していくという前提でサービスを組み立てているんです。これも僕らの大きな特徴だと思います。例えば高校生の時によく聴いていた音楽を、今でも頻繁に聴くとは限りませんよね。昔のデータをいっぱい持っていたところで、そこから導き出したターゲットにアプローチしても今は趣味嗜好が違う場合がある。だからこそ、毎月の給与というタイミングで、その時に好きなものを教えてもらえることはマーケティング価値が高いと考えています。このデータを自社で集めるのは難しいからです。
篠崎:かなり精度の高いマーケティング情報がリアルタイムで取得できるわけですね。
柴田:「好き」というのは、人間の本質だと思います。誰が何をなぜ好きなのかを教えてもらえるのは、企業やサービスにとって大きいことです。ただお金をもらえるだけだった給料日が、利用者は好きなブランドの特典がもらえて、企業は明確な利用者が見える上に収益が増え、僕らはデータが集まり、分散型社会が実現できる。三方よしが実現できます。
もちろん今のまま口座で貯金したいという人は、そのままで良いんです。でも金利ではなく、好きなブランドの特典を受けたい人は、そちらを選べるようになる。金融での選択肢を増やし、利用者が選べるようにしていきたいと思っています。
篠崎:ネット決済も普及した今、「TwooCa」が浸透し金融の概念が変わる世の中が、すぐに来る予感がします。貴重なお話をありがとうございました。
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