One story
2人の子どもを育てながら、スタートアップ企業Greenspoonで活躍する工藤 綾沙子さん。ユーザーとして魅力を感じるサービスに携わること、「新しい文化づくり」に携わること。一貫した軸を持ちながらキャリアを形成する工藤さんは、プライベートでは湘南方面に移り住むなど、多くの女性が憧れる生活を実現しています。彼女が仕事も子育ても全力で挑める秘訣に迫りました。
新卒から一貫した、「新しい文化づくりに携わりたい」という想い
−工藤さんのこれまでのキャリアについて簡単に教えてください。
2011年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、「Amebaブログ」の営業や「ABEMA」の立ち上げに携わりました。2017年にアマゾンジャパンに転職し、「Amazon Music」の営業を担当。在籍中には産休・育休を取得しています。その後、2020年に食のウェルネスブランド「GREEN SPOON」を展開するスタートアップ企業である、株式会社Greenspoonに入社しました。
−サイバーエージェントに入社を決めた理由は何でしたか。
幼少期から新しいトレンドが好きで、将来は自分で新しいトレンドをつくって特許を取りたいなと思っていたくらいで。サイバーエージェントに入社当時は「Amebaブログ」がSNSの主流文化として定着していた頃で、自分自身もユーザーとして利用していたので、マスメディアとは違うブログという新しいメディアの価値を築いている点に惹かれました。その後、新たな動画メディアの「ABEMA」の立ち上げに携わることに。“スマホで動画やテレビを視聴する”という新しい文化づくりに関われるのも刺激的な体験だったのですが、人生の中でも大きな影響を受けてきた音楽分野に携わってみたいと考え、アマゾンジャパンのミュージックチームにジョインをしました。
−Amazonでの音楽配信サービスが始まったばかりの時期に入社されたのですよね。
当時は音楽をサブスクリプションで聴くという文化がまだ確立していない黎明期でしたので、レーベルさんとプロモーション企画を考えたり、楽曲を増やす提案をしたりといった営業活動を行っていました。自分が熱中できる分野で新しい文化を作ることに携わるというのは、サイバーエージェントから一貫して自分の仕事の軸になっています。
−スタートアップ企業である株式会社Greenspoonにジョインされたきっかけは?
株式会社Greenspoonの代表である田邊は、「ABEMA」の立ち上げ時に一緒に働いていたメンバーなんです。定期的に新サービスの構想について話を聞いていて、何か出来ることがあったらぜひ協力させてほしいと話していました。GREEN SPOONは最初に25種類のスムージーを販売したのですが、そのスムージーを初めて食べた時、色鮮やかな見た目と味わったことのない驚くほどの美味しさに感動したんです。自身の感動体験を通して、GREEN SPOONなら新しい食の体験価値を作れると確信し、入社を決めました。また、「自分を好きでいつづけられる人生を」という会社のビジョンは、私自身人生において大切にしている考え方で、そのビジョンと目指す未来にとても共感したことも入社を決めた理由の1つです。
−食の領域にはなぜ関心が高かったのでしょうか。
小さい頃から人間の寿命と言われている120歳まで生きたいという思いがあるんです。よくこの話をすると笑われるのですが、本気で思っていて。120歳までに生きるには、まずは自分が健康で幸せでいないといけないと思うので、食を通してより健やかに毎日暮らすということに深い関心がありました。息子が産まれたことがきっかけでその思いは強まり、まずは日本での食の選択肢を増やしたいと強く思うようになりました。ちょうどそのタイミングでGREEN SPOONに関わるようになり、私のこの想いとGREEN SPOONの「食のセルフケア文化を創る」というミッションが合致していたので、迷うことなく、転職を決意できました。
−子育てもある中で、スタートアップ企業に行くことへの不安はなかったでしょうか。
私が株式会社Greenspoonにジョインした当時は社員が4〜5人しかおらず、toB事業の立ち上げを任されたので、1人で事業を立ち上げなければいけないという点では不安が大きかったです。でも、“子どもがいるから”“母親だから”という理由で自分自身の挑戦を諦めたくないという思いがありました。逆に立ち上げ時で一人しかいないからこそ、子育てと両立しながら挑戦し続けられる環境を自分自身で築いていけばいいのだと思い、最大限自分のパワーを発揮できる働き方を真剣に模索していくことができました。一人だったからこそ、いろんなパワーがみなぎったのかなとも思います。
−自分でやり方を見つけていけば良い、と思考を切り替えられたのは、これまでのサイバーエージェントやアマゾンでの経験も大きかったでしょうか。
そうですね。特にサイバーエージェントではベンチャーマインドが強く、自分で考えて行動し、自分で切り開いていこうという自責の意識が強いカルチャーだったので、その影響は大きかったと思います。これまでの経験を通して、戦略立案も自分が納得できる状態で進めたいという思いが強かったので、自分で考えて自分で決断できる環境を好んでいるのだと思います。
未経験ながらECモール運営に挑戦、ギフト需要で売上UPを達成
−GREEN SPOONではどのような事業を担当されてきましたか。
GREEN SPOONの主軸のサブスクリプションサービス以外でのブランド認知や売上を上げていくために様々なアライアンス事業に取り組みました。ホテルの朝食に導入、会社の福利厚生に導入など色々と広げ方を模索したのですが、まずは売上を大きく伸ばすためにECモールでの売上創出のミッションを請け負うことに。ECモールの運営は全くの未経験で分からないことだらけでしたが、日々勉強しながら売上を伸ばしていきました。育休復帰後はECモール運営と、元々やりたかった新商品開発にも関わらせてもらっています。
−未経験でECモール運営の担当になるというのは、相当ご苦労されたのではないでしょうか。
ECモール運営では広告で売上をどう上げていくかと、商品をどう魅力的にECで見せるかの2軸が求められるのですが、広告運用もEC運営も経験がなかったので、数年間はかなり大変でした。周囲にEC経験者がいないか探して、ゼロから叩き込んでくださる方を見つけ、必死に勉強しながらやっていきました。1人の個の力は限界があると思っているので、まっすぐに相手と向き合い、一緒に向き合ってくれるチームメンバーや応援してくれる人を増やすということを大事にしていました。
−どんな瞬間に仕事のやりがいを感じますか。
私自身がGREEN SPOONのいちユーザーなので、GREEN SPOONの商品を通して自分自身を大切にできていることを感じますし、自分が良いと感じる商品を、自信を持って世の中に広められるというのはやりがいに感じます。またECモールを運営していく中で「ギフトとしてもらうと嬉しい」という声に着目し、ギフトボックスやカードを作ったことで母の日に大きな反響を頂いた時は、新しいGREEN SPOONの価値を提供できたと感じられ、とても嬉しく、やりがいを感じました。
−GREEN SPOONで今後取り組みたいことは何でしょうか。
GREEN SPOONはデジタルマーケティング中心に商品の販売を行っており、メインユーザーは30〜50代の首都圏在住の方々です。より多くの人に知っていただくためには、オフラインでGREEN SPOONの魅力を伝えていく機会が必要だと思っています。GREEN SPOONを自分の生活に手軽に取り入れることで、自分自身のことを食を通して労り、その結果その自分を好きでいられる。食のセルフケアをすることで自分を大切にできて幸せでいれること。まずは日本にしっかり伝播させていきたいです。
限られた時間の中で自分が向き合いたいことを決め、優先順位をつける
−工藤さんは2人のお子さんがいらっしゃり、2度の産休・育休も経験されています。子育てと仕事のバランスの取り方はどのように行なっていますか?
子育てと仕事のバランスはやっぱり難しいと感じる瞬間も多いです。だから、私は徹底的に向き合いたいコトを決めて優先順位をつけています。仕事の時間と、子どもとの時間、自分の睡眠時間、料理をする時間は必ず確保する。平日はもうこれに尽きますね。笑 それ以外の余暇の時間は週末に作るようにしています。
−ご自身の中でキャリアのターニングポイントになったと思う時期はありますか。
Greenspoonに入社する前はずっと営業だったので、目標の数値や会社の成長のために突っ走るという意識が強かったのですが、ここでは商品を購入してくれるお客様のことを第一に考えなければ売上は伸びないと学びました。お客様にGREEN SPOONはどんな価値を提供しているのか。GREEN SPOONが生活にあることで、どうお客様の生活をポジティブに変えていけるのか。マーケティング視点で深く思考しながらものづくりができるようになったことは、自分のキャリアにおいても大きな変化になったと思います。
−今の自分の価値観や行動に繋がっているなと感じる幼少期の経験はありますか。
5歳から5年間、親の仕事の都合でアメリカに住んでおり、多様な人種や色々な考えを持つ人たちがいる環境の中で、それぞれのアイデンティティや思いを尊重し合うことを学びました。自分で考えて自分で決めて良いんだと感じられましたし、その後の大学進学なども両親は私の選択を尊重してくれたので、自分がやりたいことを追いかけたり、躊躇なく叶えたいことに突き進んでいけたりするようになったのかなと思います。
海や森の自然と温かな人々との交流が癒しに
−忙しい日々の中で、どのようにリフレッシュしていますか。
夫に相談し、1人の時間は定期的にもらうようにしています。好きなカフェでコーヒーを飲んでスイーツを食べる、といった些細な時間で良いので、自分の機嫌を取ってあげるようにしています。また考え込みやすい私にとって、料理をする時間は無になれます。急に思い立って無心で作り置きを作ることもあって、そうすると自然とリフレッシュをしているように思います。あとはお友達と、仕事以外のコミュニケーションの時間を取れるのも大事ですね。
−昨年から海の近くに移り住まれましたが、きっかけは何だったのでしょうか。
アメリカに住んでいた時、海が近い町だったので、よく海に行っていたんです。夫も幼少から海で遊ぶことが多く海の近くに親しみがあって、夫婦でよく湘南方面に出かけていました。子どもが産まれてからも家族で遊びに来ていて、自然がいっぱいで食文化も好きなこの場所に住みたいなと思うようになりました。通勤が大変になるんじゃないかとは思ったのですが、自然と早起きになり、良い生活リズムになっていると思います。
−海の近くに住んでみて感じることや、生活の変化はありますか。
町の方々が気さくに話しかけてくれるので、息子のコミュニケーション力が上がりました。東京に住んでいた時はマンション住まいでご近所付き合いもほとんどありませんでしたが、今はご近所の方がハロウィンの時期に「お菓子取りに来てね〜」と声をかけてくれます。ご近所の人たちと助け合っていける環境にあるのが、子育てしている身としても嬉しいです。
−10年後、どのような人になっていたいですか。
10年後、人生をより豊かにしていく未来を築いている人でありたいです。
特に食の領域でそれを実現したいなと思っており、世界の多様な食の選択肢を知って、日本の食習慣や食の選択を、よりヘルシーで豊かなものにしていきたいです。それを実現するために、もしかしたら日本ではなく、海外で生活してるかも?と思うとそれはそれでワクワクしますし、家族とどんな環境でも楽しめる、いい意味で既成概念のない自分でいたいですね!