One story

薬学の専門知識を活かし、国内外のフィールドでキャリアを築いてきたCBC株式会社の神﨑真美さん。社内でも稀有なキャリア「薬事」を極め、現在はマネージャーとして組織作りにも取り組んでいます。ライフプランとの両立について考えながら、自ら選び、自ら行動してきた神﨑さんに、自分らしいキャリアと人生を歩むためのヒントを伺いました。
「薬剤師」「海外」、2つのキーワードから辿り着いた「薬事」という仕事

−薬学部ご出身の神﨑さん。薬学に関心を持たれたきっかけは何でしたか。
アレルギーで薬を飲む機会が幼少期から多かったことや、祖母が漢方薬を飲む姿を隣で見てきたことが原点になっていると思います。全寮制の高校に進学し、国立理系進学コースにいる中、「ディスカバリーチャンネル」の番組で、アメリカの薬剤師の活躍を見たこともきっかけの1つです。医師と比べて研究・臨床・一般企業への就職などキャリアの選択肢が幅広いことに魅力を感じ、薬学部に進みました。
−様々なキャリアの選択肢の中からCBC株式会社を選んだ理由は?
小中学生の頃から洋楽を聴いたり、ペンパルでニューヨークの友人と文通をしたりするのが好きだったので、「薬剤師」と「海外」という2つのキーワードが自分の中にありました。就活サイトでこの2つを入れて検索をしてみたところ、1つだけヒットしたのがCBC株式会社の社員インタビューだったんです。薬剤師の資格を持ち、海外から医薬品原料を輸入して販売する事業に携わっていることが書かれており、薬学の知識を活かしながら海外を飛び回る姿に憧れを抱きました。面接を通してCBCの社員の伸び伸びとした雰囲気にも惹かれましたね。就活サイトに載っていた社員は、入社後大変お世話になる先輩(今では上司)となりました。
−入社後に苦労したことはありますか。
最初は希望していた営業職として配属され、先輩に同行しながら営業活動も経験しました。当時は今以上に男性が多い業界でもあり、若手として顧客との関係構築に苦労する場面もありました。
そんな中、社内では薬事業務の需要が高まり、薬学部出身だったことから薬事業務にも携わっていました。入社して1年が経つ頃、上司と相談を重ねた結果、自分の専門性を活かしながら新しい分野に挑戦できる薬事業務に向き合うことを選びました。薬事の仕事では中国やインド、イタリア、アメリカなど海外とのやり取りも多く、非常に魅力的な仕事でした。当時としても珍しい業務領域だったとは思いますが、自分の強みを活かしながら成長できる環境だと感じました。
−薬事とはどのような仕事なのでしょうか。
医薬品を製造・販売するために、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構に対して承認・許可申請を行ったり、法令を遵守するための管理や行政との折衝を行ったりする業務です。CBCにおいては、日本に医薬品を輸出する海外製造所の代理人として、行政や顧客である製薬会社と調整し、顧客の承認取得・維持を支えています。医薬品の品質や安全性に関する基本的な考え方は世界共通ですが、承認手続きや運用ルール、求められる資料には国ごとの違いがあります。そのため海外から新たな品目を輸入する場合は、日本の規制や制度に沿った形で承認取得や各種手続きを進める必要があります。
販売後も法規制や運用ルールに変更があれば随時対応が必要となります。承認が得られなければ患者さんの命に関わる場合もありますから、迅速に、正確に承認申請を進めることが求められます。医薬品の主成分に関する情報は機密性の高い情報も多いため、現地に赴いて資料を確認したり、製造所の製造・品質管理の体制を確認したりすることもあります。
日本の製薬会社、海外製造所、そして規制当局の間に立ち、それぞれの要件や考え方を調整しながらプロジェクトを前に進めていくことも重要な役割です。 海外とのやり取りや出張の機会も多く、私にとっては専門性と海外への興味の両方を活かせる、とても魅力的な仕事だと感じています。
−どんな時に仕事のやりがいを感じられますか。
承認が降りて薬の販売が決まった時はやはり達成感があります。社会的責任を伴う仕事なので、無事に販売まで漕ぎ着けられてほっとするという感覚が強いかもしれません。日本と海外では制度や運用の違いもありますし、海外から見ると日本の市場規模はそこまで大きくないためプライオリティを上げてもらいにくい中、日本の厳しい制度と要求品質をご理解いただき、対応していただく必要があります。厳しい瞬間もありますが、そこをいかに調整するかが私たちの腕の見せ所だと思います。
入社2年目でスペインへ。挑戦の機会が引き出してくれた強み

−キャリアを決める1つの大きな要素であった海外経験についてもお話をお聞かせください。
入社2年目に薬事担当としてスペイン出張に行かせていただきました。“2ヶ月後にスペインに行きたい?”と言われた時は胸が高鳴りました。会社としても新しい事案でしたし、薬事についても専門的な知識を身につけた上で、それらを英語で交渉しなければいけません。先輩につきっきりで指導していただき、必死に準備した2ヶ月間でした。新人を抜擢してくださった先輩と上司には今でも感謝しています。今振り返ると、上司が若手である私のモチベーションを引き出すため、また私が2ヶ月で伸びると信じてくださって託してくださったのだなと感じます。
−挑戦する機会を与えてもらえる環境だったんですね。
まだ少人数の新しいチームだったことも大きいと思います。一緒にスペイン出張にした上司も、訪問先までは一緒に来てくれたのですが、説明はもう私に全てお任せという感じで、別の会議が入っていたのです。もちろん準備して行ってはいたものの“本当に新人の私に全て任せてくれるんだ”と驚きましたね。よく信頼してくださったと思います。
−大きな挑戦を与えられた時、プレッシャーに感じる人も多いと思います。神﨑さんはどのように乗り越えて成功に繋げられましたか。
海外出張は自分が行きたいと言ったことでしたから、“やるしかない”という気持ちが大きかったです。自ら手を挙げた以上は責任をもってやり遂げたいと思っていましたし、周囲も私に期待して機会を与えてくれている。その思いに応えたいという気持ちもありました。もちろん分からないことだらけでしたが、とにかく気合いを入れて取り組みました。自分にとっても初めての案件だからこそ疑問もたくさんでてきます。私は「自分が疑問に思うことは、相手からも質問されるはずだ」と考えて、先輩を質問攻めにしながら一つずつ理解を深めていきました。相手の質問の2手、3手先を予想して入念に準備できたので良い結果に繋がったのかなと思いますし、それができたのは根気強く指導してくださった先輩のおかげでもあります。
「日本人として答えて」イタリア女性役員との出会い
−これまでのキャリアの中で印象に残っている出会いはありますか。
イタリアでの研修中に、現地の女性役員からマネージャー陣の会議の中に呼ばれ、意見を聞かれたことがあります。なぜ私が呼ばれたのかを理解しないまま、教科書通りの回答をしたところ、“そんなことを聞きたくて呼んだんじゃない、日本人としての感覚を聞きたくて呼んだんだ”と言われてハッとしました。そもそもイタリアでは役職におけるヒエラルキーは日本より大きく、研修生の自分が意見を聞かれることは通常ありません。でも文化に対しての疑問があれば、その文化をよく知る人に直接聞く。そうした姿勢はとても素敵に感じましたし、同時に「正しい答えを返すこと」だけが価値ではなく、自分自身の経験や立場だからこそ提供できる視点があるのだと学びました。
−日本はジェンダー・ギャップ指数が世界118位(2025年)と大きな遅れを取っています。海外出張も多い中で、他国との違いを感じることはありますか?
ヨーロッパでは営業職を含めさまざまな職種で女性が活躍しており、会議の場でも女性マネージャーの割合が高いことが印象的でした。日本も以前と比べると変化してきていると感じますが、当時は大きな違いを感じたことを覚えています。 また、日本では食事の席で女性がお酒を注いだり料理を取り分けたりする習慣がある一方で、部下が上司を敬う文化もあります。そのため、女性でありマネージャーでもある自分が日本でどう振る舞うべきか迷う瞬間があります。海外では国によって考え方はさまざまですが、立場や性別に関係なく自然に気遣いをする文化に触れることも多く、「こうあるべき」という価値観は国や文化によって大きく異なるのだと感じています。
−入社から16年、転職や海外での就職などを考えることはありませんでしたか?
海外への挑戦を考えたこともありました。20代の頃は海外への憧れが強かったのですが、当時は30歳前後で結婚するのが自然だと思っていましたし、高校から親元を離れて寮生活をしていたことからも年齢を重ねるにつれて家族と過ごせる時間の大切さも意識するようになりました。振り返ると、海外で働くことそのものよりも、自分にとって大切な人とのつながりを大事にしながら海外と関われる働き方を求めていたのだと思います。
一方で、CBCの居心地の良さ、人間関係に恵まれているという点も私の中では大きかったです。入社当時は今ほど風通しが良かったわけではなく、社会全体としてもジェンダーギャップを感じる場面がありました。そんな中で、私の上司は意識的に挑戦の機会を与えてくれましたし、先輩方も性別を意識することなく一人のメンバーとして同じように接してくださいました。振り返ると、そうした方々に恵まれたことが、私がCBCでキャリアを続けてきた大きな理由の一つだと思います。
恐らくCBC以外の会社でも自分がやりたい仕事、モチベーションを探すことはできると思います。でも、職場での人間関係や風土は自分1人では変えにくいものです。仕事でどんなに困難な瞬間が訪れても、居心地の良い環境であれば乗り越えられる。だからこそ、今の恵まれている環境を失うリスクは大きいと判断してきました。
自分らしいマネージャー像への挑戦

−約4年前からマネージャー職に就かれている神﨑さん。マネージャーという新たなキャリアをどのように捉えられていますか?
最初にお話をいただいた時はとても驚きました。以前からリーダーシップを発揮する場面はありましたが、自分自身ではチームのトップに立つよりも、マネージャーの右腕としてチームを支える役割の方が向いていると思っていたからです。“偉くなりたい”というモチベーションもなかったですし、年上の先輩もいるチームでマネージャーになることに戸惑いがありました。何より自分に自信がなかったんです。当時はマネージャー研修がなく、女性のマネージャーも少なかったので、どのようなマネージャー像を目指すべきかが分かりませんでした。最終的には、オファーをいただいたということは今までやってきたことを認めていただけたのだと感じましたし、これまで多くの機会を与えてくださった方々の期待にも応えたいと思いました。正直、自信があったわけではありませんが、まずはやってみようと決心しました。
−ロールモデルが少ない中、どのようにご自身のマネージャー像を見つけていきましたか。マネジメントにおいて心がけていることはありますか。
素晴らしいマネジメント力を発揮されている著名人は多いですが、現時点で理想のマネージャー像は見つかっていません。真似をするには恐れ多く、そして、おそらく性格や考え方が少しずつ違うためです。ですから、自分が部下だったらどうしてほしいか、を考えて動くようにしてきました。
私は自分自身を過小評価してしまいやすいので、自分がマネージャーとしてメンバーと接する際には具体的なその人の強みや良い点・改善点を言語化してフィードバックするよう、心がけています。
メンバーのちょっとした気持ちの変化に気がついた時には、なるべく声を掛けるようにします。話を聞いてみると子育てが大変な状況だったり、仕事以外のことで悩んでいたりして、私自身もメンバーへの理解が深まることが多いです。こういったフィードバックの仕方や察知力は、自分の強みの一つだと感じています。最初は戸惑いもありましたが、今は、メンバーの成長を支え、チームとして成果をだすことにやりがいを感じています。マネージャーという新たな挑戦を楽しめていると感じています。 CBCでは女性管理職はまだ多くはありませんが、女性が増えることで組織に多様な考え方やマネジメントスタイルが生まれると思っています。私自身も自分らしいマネジメントを続けながら、後に続く人たちの選択肢に良い影響を与えていけると良いなと感じています。
自分で決めて、自分で行動する。「こうあるべき」に捉われない選択を
−ライフイベントとキャリアにおける両立について、考えたり悩んだりしたことはありますか。
20代の頃は海外で働きたい思いが強く、海外駐在や研修に行かせてほしい、どこでも行かせてくれとアピールしていました。ただ、当時は私自身も30歳前後で結婚するのが自然だと思っていましたし、将来についても漠然としたイメージ持っていましたが、結果的には結婚という道を選ばずに歩んできました。
日本社会では、仕事をどれだけ頑張っていても“結婚したら”“子どもが生まれたら”と言われることがあります。でも私は、自分が選んだ仕事や働き方に納得していますし、今も充実した日々を過ごしています。 しかし、人生の中で大切にしたいものや優先順位はその時々で変わることもあります。最近は家族を持つことについても前向きに考えるようになりました。ただ、それも“こうあるべきだから”ではなく、今の自分がそうしたいと思うからです。どんな道を選ぶとしても、最終的には自分で決めて自分で行動する。その積み重ねが納得感につながると思います。今はどんな自分になっていくのか、未来にワクワクしています。
−後悔しない選択をするために心がけていることはありますか。
もちろん人間は誰しも、 “あぁしておけば良かった”と思うこと瞬間があると思います。それでも後悔を最小限にするために、自分で考えて行動するしかないと思います。 私自身も、薬事専門職へのキャリア選択や海外での仕事、マネージャー就任など、その時々でさまざまな選択をしてきました。どの選択も正解がわかっていたわけではありません。でも、自分で考えて納得して動いて、それを正解にするしかないと思っています。だから私は、「こうあるべき」に合わせるのではなく、自分が何を大切にしたいのかを考えながら行動することを心がけています。それがどんな結果になったとしても、自分で決めて自分で行動していくことが、自分らしい人生への納得感につながるのではないかと思います。
<後編では、神﨑さんと共にCBC社で活躍する女性社員との座談会をお届けします>


