Bloom talk
株式会社チチカカで代表取締役を務める髙橋 晴香さん。店舗でのアルバイト勤務からスタートし、VMDや人材教育、商品企画、営業など多業種を経験しながらチチカカの全てを見てきました。今、代表取締役としてブランドを背負う心境とは。
多国籍の文化が共存する街・吉祥寺で出会ったチチカカ

篠崎:髙橋さんとは、私が広告会社で勤務していた時、チチカカを担当させていただいた際に知り合いました。初めて1人で担当した思い出深いクライアント様です。ファッションイベント「Girls Award(ガールズアワード)」でのプロモーションなどをご一緒しましたね。そこから約12年、こういった形で再会できてとても嬉しいです。
髙橋:懐かしいですね。私も嬉しいです。今日はよろしくお願いします!
−まずは髙橋さんが社長になるまでのキャリアについてお聞かせください。
髙橋:ファッション関連の仕事に就きたくて、文化服装学院に通っていた頃、吉祥寺に住んでいたんです。吉祥寺は多国籍の音楽・ファッション・飲食に溢れた町で、自然とそういった文化に惹かれていきました。中でもチチカカの店舗には中南米のカラフルな雑貨やインドの民芸品、手織りの刺繍などが並んでいて、凄く楽しい空間でした。1つ1つの商品が手作りで作られていて、二度と同じ柄や色合いには出会えないかもしれない。一点物の魅力を知りましたね。
“いつかこういう店で働きたいな”と思いながら学生生活を過ごしていましたが、いざ就職活動を始める時期にチチカカの店員募集がなかったんです。そこでカフェなどのアルバイトをしながら、ひたすら募集を待ちました。卒業後の5月頃にアルバイトの募集があり、すぐに応募しました。
篠崎:正社員の採用ではなく、アルバイトからスタートされたのですよね。
髙橋:いつか自分でチチカカのようなお店をやりたいという気持ちがあったので、私にとって、正社員かどうかはあまり重要な問題ではありませんでした。とにかくチチカカのような商品を輸入するにはどうしたら良いのか知りたかったんです。
篠崎:とにかくチチカカで学びたいという気持ちを優先されたのですね。そこからどのようにキャリアが変化していきましたか?
髙橋:吉祥寺南口店に配属されて半年後に、店長になりました。どういうラインナップの商品を揃えるとお客様に喜んでもらえるのか、どんな店舗をつくれば楽しんでいただけるのか。たくさんのお客様に出会いながら学ぶ事ができて、無我夢中で働きました。 その後、仕入れや店舗経営の専門知識を身につけたいという思いから、直営店での勤務を希望しました。ちょうどその頃チチカカは全国展開に向けて動いていたので、初の東北出店となった山形店に異動となりました。23歳の時です。
篠崎:住む場所を変えるというのは、キャリアにおいても人生においても大きな転換点です。迷いはありませんでしたか?
髙橋:独立するという夢のために、とにかく店舗経営について学びたいという気持ちが強く、あまり迷いはありませんでした。

篠崎:目標に真っ直ぐな姿が髙橋さんの魅力ですね。初の東北出店はいかがでしたか?
髙橋:最初はブランドの知名度があまり高くなかったのですが、大通り沿いの路面店ということもあり、テレビ番組や雑誌で取材をしていただきました。中南米民芸品店という打ち出し方は当時珍しく、凄く注目をしていただくことができました。私が最初にチチカカに感じた衝撃やワクワク感を、山形のお客様にも届けることができたと思います。たくさんのお客様に知っていただくには販促がいかに重要なのかを実感しましたね。 またブランドに関心を持っていただいても、総柄のワンピースを着るのは勇気がいるというお客様もいました。そのため無地の商品と掛け合わせて打ち出したり、普段着とのコーディネート提案をしたりと工夫しました。
店舗勤務から大きなキャリア転換へ

−店舗勤務のキャリアから、本社勤務へと転換したきっかけは何でしたか。
髙橋:山形店にいた頃、どうすれば売上を伸ばしていけるのかを試行錯誤していました。特に意識していたのが、在庫をたくさん抱えずに売上を伸ばすことです。当時は店長の権限で在庫を調整できる仕組みだったので、仕入れと在庫のサイクルを工夫していました。それによって全国的にも売上が好調であったことに当時の社長が注目してくださり、全店舗の売り場づくり・マーケティング戦略を担うVMD事業部(ビジュアルマーチャンダイジング)として新横浜の本社へ異動することになりました。
篠崎:在庫管理とコスト調整は利益に直結します。髙橋さんの実績が買われ、新たなキャリアへと転換していったわけですね。再び住む場所を変えるという決断も迫られたと思います。
髙橋:当時は結婚して1歳と3歳の子どもがいたので、吉祥寺から山形に行く時のように簡単に決断することはできませんでした。本社がある横浜市には待機児童が約2,000人いて、なかなか保育園に入ることができなかったんです。本当に様々な保育園をあたって、少し離れた市でようやく受け入れてくれる園を見つけることができました。子どもを育てながら働き続けることの大変さを身にしみて実感しましたね。でも異動時は新しい仕事への期待感が大きかったです。
篠崎:店舗での実務実績があったとは言え、VMDとしては初めての経験も多かったと思います。キャリア転換において戸惑われたこともあったのではないでしょうか。
髙橋:まずパソコン業務自体が不慣れだったので、子どもを寝かせてからパソコンの勉強をしていました。毎日寝不足で大変ではありましたけれど、充実感もありました。
篠崎:VMDとしてご活躍以降も、様々な職種を経験されていますよね。
髙橋:店舗が増えていくにあたって人材開発の重要性が増し、マネージャーとして店舗スタッフの教育サポートに携わりました。スタッフもチチカカが好きで頑張りたいという熱い思いを持つ人ばかりだったので、みんながステップアップしていく姿を見られる、やりがいのある仕事でしたね。その後は商品企画部や営業部などを経験し、2026年5月より代表取締役を務めています。
篠崎:企業のフェーズに合わせ、時々に必要な部署に呼ばれていらっしゃいます。あらゆる業務を経験され、なるべくして社長になられたように感じます。
髙橋:自分としてはひたすら目の前にある、改善しなければならないものに向き合ってきたという感覚です。コロナ禍には店舗が営業できないという前代未聞の課題にも直面しました。どうブランドとして生き延びていけば良いか分からない。そんな時、スタッフたちの声を受けて、SNSの強化に踏み出しました。やり方は分からなくても、チチカカのために何かしたい、やってみようというスタッフが多いんです。そうやってみんなで新しい道を見つけてきたからこそ、今があると思っています。
篠崎:髙橋さんも店舗スタッフ出身であり、スタッフと身近な距離感で接していらっしゃいます。そういった距離感の近さ、意見の出しやすさも風通しの良い組織作りに繋がっているのでしょうね。

品質が高い製品は愛着が湧く、長く使える
−チチカカはサステナブルという言葉が浸透するはるか前から伝統技術の継承やフェアトレードに取り組んでこられました。
髙橋:私たちはお客様の「HAPPY」と生産者の「HAPPY」を繋げる「HAPPY TRADE(ハッピートレード)」を掲げています。HAPPY TRADEの対象商品は売上金の一部が生産者に還元されます。世界各地域で伝承されてきた技法や民芸品と、チチカカらしさを融合したファッション性のある商品を創ることにより、技術と後継者を育て、世界各地域の民族文化を守ることに繋げたいと考えています。
また創業者は、創業当時から地球環境への意識が高く、店舗の什器も社長自らが作っていました。自分たちで作ることの良さや、ものづくりを大切にする意識は、創業当初からブランドに根付いています。

篠崎:「HAPPY TRADE(ハッピートレード)」についてはクレドや店舗にも記載されていますよね。チチカカの存在理由として、「FOR THE WORLD」「国、世代・ジャンルを超えて取引先各国の人たちと一緒に切磋琢磨、共存共栄して彼らと共に成長する」という言葉があります。「共存共栄」は私たちCareer Bloomが所属するCBC Groupの経営理念でもあります。目指す未来が一緒なのだなと凄く運命的に感じました。
髙橋:エシカルやサステナブルは今非常に世界的に注目されていますが、経営目線で言うと利益には直結しにくいのが現状です。チチカカとしてもこういった商品の売れ行きは厳しく、現在では製造をストップしているものもあります。しかし必ず今後、利益を立て直した先で、再び商品を増やしていきたいと考えています。私たちの理念や価値観をお客様に伝え、同じ思いで買っていただける方が増えていくと嬉しいですね。チチカカの商品の良さはカラフルで見た目が楽しいだけでなく、着心地の良さや品質の高い商品であること、だからこそ愛着が湧き、長く大切にできる商品であることだと思います。

篠崎:まさにサステナブルの先駆けのブランドです。一部の仕入れをストップする苦しい状況下でも、インドのブロックプリントや手染めなどの手仕事だけは守り続けていらっしゃいます。そこに髙橋さんの強い思いを感じています。ブランド愛が強い分、ここ数年の店舗規模の縮小は辛かったのではないですか。
髙橋:なかなか現実を受け入れるのは難しかったです。特に最初に入った吉祥寺南口店を閉めなくてはならない時は、とてもショックでした。ただそういった状況だからこそ、自分に何ができるかを考えましたし、同じような思いを持つ仲間が残り続けてくれました。
篠崎:私が広告会社でご一緒している時、社員の皆さんのブランド愛に本当に感激しました。「Girls Award(ガールズアワード)」でも様々なモデルさんがチチカカを着て歩いている姿を見るために、たくさんの社員の皆さんが応援に駆けつけていらっしゃいましたよね。担当者として、私自身も忘れられない思い出になりました。
店舗でも店員の皆さんが好きな商品を、高い熱量で語っていらっしゃる姿が印象的です。それが伝わっているからこそ、チチカカのファンは後を絶たないのだと思います。
髙橋:本当にみんなチチカカが好きなんです。好きだからこそ、たくさんの人に知ってもらいたい、買っていただきたい。そういう純粋な思いが集まっているのはとても稀有な組織だと思います。商品企画のメンバーが若く、みんなでブランドを育ててきたというのも大きかったのかもしれません。
諦めるより、どうすれば乗り越えられるかを考える

−本社異動の際のお話にもありましたが、子育てと仕事とのバランスについてはどのように向き合ってこられましたか。
髙橋:家にいる時は最大限子育てに時間を使いましたが、仕事にかける時間も長かったので、子どもには寂しい思いをさせたことも多かったと思います。子どもとの時間をもっと大切にすべきなんじゃないかという思いと、子どもが熱を出して帰る時には仕事のみんなに申し訳ないなという思い、どちらの思いもあって葛藤していました。そういった思いから今は代表取締役として、子育てと仕事がより両立しやすい環境を作りたいと考えています。
具体的には、以前に比べて属人的な仕事を減らし、チームでサポートできる体制を整えています。またコロナ禍を経てリモート制度を導入し、在宅勤務を可能にしました。
篠崎:働く環境というのはやはりトップの理解と行動あってこそだと思います。今後、社長として目指していることをお聞かせいただけますか。
髙橋:まずはブランドの再構築、売上の最大化とコスト削減が目下の課題です。これを解決したのちに、インドの手刺繍を使用したプレミアムシリーズの拡充やHAPPY TRADEの再開などに挑んでいきたいです。
篠崎:挑戦することを辞めない髙橋さんがかっこいいです。
髙橋:確かに諦めたり止まったりするのは苦手ですね。好きなブランドだから楽しいし、試練は乗り越えるためにあると思っています。諦めるという選択をするよりも、どうすれば乗り越えられるかを考えていると思います。
篠崎:唯一無二のリーダーですよね。アルバイトから社長へ、キャリアを築いていることも若い世代にとって希望だと思いますし、どんなピンチの時にも逃げなかった髙橋さんへの信頼も大きいと思います。私もいちブランドのファンとして、応援し続けております。今日はありがとうございました。

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